top of page

Q. 何年前から映像をつかった作品をつくっていますか?

A. 初めて映像をつかった作品をつくったのは2003年です。大学三年生の秋でした。

Q. 何故、映像をつかった作品をつくりつづけているのでしょうか?

A. いくつか惹かれる理由がありますが、簡単にまとめると三つあります。一つ目は映像は透明だということ。次にサイズが可変だということ。そして本質的にコピーであるということです。

Q. 透明であることに魅力を感じる理由とは?

A. 映像表現にあらわれる光には二種類あって自ら発光するものと、反射光で見えるものがあります。      とりわけ後者のあり方に魅力を感じて投影による映像表現をつづけています。映写機から放たれる 

光自体は質量もなく透明なので、像を受けとめるための「スクリーン」が必要になってきます。

の光単独では成立しない頼りなさが制約であると同時に、他の美術作品の素材にはない可能性に

なっています。

Q. 一つ目と二つ目の理由は光の特性をあらわしているように思えますが、三つ目の理由がユニークで

すね。

A. 自分の手でオリジナルなものをつくる自信がないので、映像をあつかうのは気が楽です。あくまで

も「影」です。

Q. 映しだされている映像は全て実写ですか?

A. コンピューター・グラフィックスとよく間違われますが、現実の「うつし」にこだわってカメラをつかっています。リアルなものを撮っているのにフィクションに見間違われるのは自分でも奇妙です。ベンヤミンの有名な言葉の受け売りですが、カメラによってあらわれる視覚の無意識に興味があり、そのような映像をこれからも撮っていきたいです。

 

Q. それでは最後の質問です。絵画や彫刻のように作品が残らないことについてはどう考えていますか?

 

A. 強がりに聞こえるかもしれませんが、自分がつくった作品よりも鑑賞者の眼を通してのこる残像の方に興味があります。てんでばらばらだと嬉しいですね。

​​「SHOW-CASE project No.2 透明なケース」(慶応義塾大学アート・センター、2015年)より

bottom of page